詐欺による意思表示は、本人が取り消すことが可能です(民法第96条第1項)。
例えば、Bの詐欺によりAがBに土地を売却し、土地を取得したBがその土地をCに転売するケースでは、AB間の土地売買は詐欺のために取り消すことができます。
しかし、Aが土地売買を取り消した場合、その売買は初めからなかったものとして扱われる(民法第121条本文)ので、Cは権利のないBから土地を購入したこととなり、CはAに対して土地を返還する義務が発生します。
取引の安全確保のため、民法第96条第3項ではCが善意である場合(すなわちAが詐欺にあっていたことをCが知らない場合)には、Aは取消しの効果をCに対して主張できないと定めています。
これにより、善意のCは有効に土地の所有権を取得できることとなります。
なおこの場合に、第三者Cには無過失までは要求されることはありません。
また、第三者Cが土地の登記を備えている必要があるか否かについては諸説あり、学説が対立しています。
有力説としては、第三者Cが自分名義の登記を取得することを要求する説があります。
詐欺における第三者Cの保護は、詐欺にあった本人Aの犠牲において達成されるので、第三者Cは自己の権利の確保のためになすべきことをすべて行なうべきであるという考えに基づいています。
なお判例は農地売買において、第三者が仮登記を備えるべきであると判断していますが、これは特殊な事例で、一般論ではないと解釈されています(昭和49年9月26日最高裁判決)。