暴行・監禁・害を加える旨の告知を行い、恐怖心を抱かせることにより、真意に反した意思表示を行なわせようとする行為のことを脅迫といいます。
ただし、害悪の内容が法律的に正当なものであっても、強迫に該当する場合があります。
例えば、会社役員に対して「役員の不正を告発する」と告知して、畏怖を感じさせ、無理やり取引を行なおうとする場合などです。
強迫による意思表示は取り消すことができます(民法第96条第1項)。
強迫行為と意思表示との間には因果関係が必要とされていますので、強迫行為があったとしても意思表示との間に因果関係がない場合には、その意思表示を取り消すことはできません。
例えば、強迫を受けた者が畏怖を感じなかった場合には、強迫行為と意思表示の因果関係がないとされます。
強迫による意思表示の取り消し事例としては、
他人を軟禁状態におき、暴力をふるうなどして無理やり意思表示を行なうよう強要しました。
これは自由意思を喪失しているため、意思表示は無効と解釈されました(昭和33年7月1日最高裁判決)。
なお、強迫により法律行為が行なわれた場合には、強迫があったことを知らない(=善意の)第三者はまったく保護されません。
この点で民法は、詐欺の被害者よりも、強迫の被害者をよりいっそう保護しているといえます。
(「詐欺における第三者保護」を参照のこと)
なお、強迫は取引の当事者が行なう場合だけでなく、当事者以外の者が行なう場合もあります。
このような第三者による強迫の場合でも、強迫を受けた者が行なった意思表示は、取り消すことができます(民法第96条第1項)。