不動産を探す際には、不動産広告に記載されている情報が頼りになります。素人は不動産の専門用語はわからないので、広告の情報が頼りになります。誇大広告禁止は当たり前ですが、取引金額が大きくなる不動産は特に厳しいルールに従って正確な情報を記載しなければなりません。2022年9月1日から改正された不動産公取規約が施行となりました。改正後は今までの表示を続けていると不当表示となり、罰金や免許取り消しの処分がくだります。
この記事では、公正競争規約の改正も含めて、不動産広告の基礎知識についてまとめていきます。
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不動産広告のルール
不動産広告を掲載する際には、「宅建業法」と「不動産公正競争規約」の2つのルールに従う必要があります。
1.宅地建物取引業法
宅地建物取引業法において特に広告に関連するのは「誇大広告の禁止」「広告開始時期の制限」「取引態様の明示」です。それぞれを簡単に説明します。
誇大広告の禁止
誇大広告とは、著しく事実と相違する表示や実際のものより著しく優良、有利であると誤認させるような表示を指します。不動産のみならず、いかなる商品、サービスについて適用されるルールです。
広告開始時期の制限
これは未完成物件についての規定となります。未完成物件は,開発許可や建築確認後でないと広告できないルールです。
取引態様の明示
取引態様とは、宅地建物取引業者が「売主」「貸主」「代理」「媒介(仲介)」のいずれに該当するのかを明示することです。不動産用語に疎一般の消費者がわかりやすいように表示する義務があります。
違反した場合
- 指示処分
- 業務停止処分
- 免許取消処分
- 3年以下の懲役
- 300万円以下の罰金
以上のうちいずれか、もしくは併科されます。
2. 不動産公正競争規約(表示規約)
次は「不動産公正競争規約」について説明します。自主規制、表示の基準、用語の使用に大きく3つに分けられます。不動産広告を扱う上で最も重要である「公正競争規約」が改正され、2022年9月1日から施行となりました。注意が必要な法律が「景品表示法(不当景品類および不当表示防止法)」です。「景品表示法」は一般的なビジネスにおいて消費者への誤認を防ぐために、大まかな方針を定めた法律です。
不動産に関係のない方でも耳にしたことがあると思います。事業団体または業種ごとに公正競争規約を設定しています。取引金額が大きくなる不動産業界においては、独自に不動産広告に関する具体的な細かいルールが規定されています。
違反した場合
- 警告、50万円以下、もしくは500万円以下の違約金
以上のいずれかが併科されます。不動産広告を出す場合は、必ず確認しましょう。
主な公正競争規約の改正点
細かい改正点が多数ありますので、主な改正点をまとめて紹介します。詳細は不動産公正取引協議会の新旧対照表で確認ください。
改正点の要点
2022年9月1日の改正では、強化された点、緩和された点があります。改正された点を大まかにご紹介します。
強化する規定
交通の利便性・各種施設までの距離又は所要時間について
特に変わった点が分数、距離表示についての変更です。表示が緩和された点と厳しくなった点がありますので、分数、距離表示のルールについて少し説明します。
分数・距離表示についての変更の詳細
今までの広告でよく見かけたのは、「〇〇から徒歩何分」もしくは「〇〇km」でした。実際にkmよりも、分表示の方がわかりやすく実用的です。新ルールでは、分数のみの表示で良くなりました。分数表示については、物件から施設までの距離を計測する際、最も近いところで計測していました。複数区画の分譲地では、入り口近くの住居と1番奥の住居ではかなり距離に差が出ることもありました。ですから、実際に住んでみると表示以上に施設までの時間がかかることがありました。
新ルールでは、1番遠い区画からの距離も必要となりました。表示例としては、駅徒歩〇分〜〇分となります。ちなみに徒歩による所要時間は、80mを1分間として計算しています。また、集合住宅や大きな分譲マンションの場合は、表示に特に注意が必要となりました。従来、敷地出入り口を起点としていた距離測定が、建物の出入り口を起点とすることになりました。大きなマンションでは数分の違いが出ることもあります。電車の乗車時間については、朝のラッシュ時の時間を使用し、おおよその乗り換え時間の表示も必要となりました。新ルールの分数・距離表示の変更は、買い手にとってとてもわかりやすく便利な改正となりました。
特定事項の明示義務について
擁壁に覆われていないがけの上下にある土地について表示義務がありましたが、加えて建築の際に制限が加えられている場合は、内容の表示が義務となりました。
必要な表示事項に新設(追加)した事項
引越し可能年月、入居可能時期と取引条件の有効期限が追加されました。
緩和する規定
- 海や湖沼、河川、岸、防波堤から直線で300m以内にあればこれらの名称が使用可能。街道名は、直線で50m以内であれば使用可能。
- 未完成、新築物件などにおいて、同一でなくても同一の施工業者の建物、構造、使用、階数が同一である、規模、形状。色等が類似していれば写真を使用可能。
- 施設までの距離が徒歩所要時間の表示も認める。
- 販売価格の二重表示について、値下げした日を明示すること。比較として使用する直前価格を3ヶ月から2ヶ月に緩和。
- 予告広告やシリーズ広告に一棟リノベーションマンションを追加。
- 予告広告後の本広告をインターネット広告のみでも可能。
特定用語の使用基準
不動産広告では特定の用語に対して使用基準が様々に設けられています。広告でよく見かける用語の使用基準を知っておくと便利です。
特定用語 | 使用基準 |
新築 | 建築後1年未満で、一度も住居用に供されていないもの |
新発売 | 新築、新造性された土地を一般消費者に初めて購入申し込み勧誘する |
ダイニング・キッチン(DK) | 台所と食堂の機能が一室に併存している部屋 |
リビング・ダイニング・キッチン(LDK) | 居間と台所、食堂の機能が一室に併存する部屋 |
宅地の造成工事完了 | 宅地上に建物を建築できる状態。工事完了の検査に合格。 |
建物の建築工事の完了 | ガス、水道、電気等が整備され住める状態 |
使用禁止の用語
また、不動産広告では表示内容の根拠を示す資料がない限りは以下の特定用語の使用は認められません。以下に表示する、よく目にするような用語ばかりです。人気が高く、売れ行きがいいように印象付ける言葉が並びます。うっかり使用しないように細心の注意が必要です。
使用が禁止されている用語例
- 完全、完ぺき、絶対
- 日本一、日本初、業界1、超、当社だけ、抜群
- 特選、厳選
- 最高、最高級、極、特級
- 買得、掘り出し、土地値、格安、投げ売り、破格、特安、激安、バーゲンセール、安値
- 完売
不動産業界に興味のある方におすすめの本
これから不動産業界に就職する方や宅建の資格を学びたい方、不動産の知識を深めたい方におすすめの本をご紹介します。不動産業界独自の用語を知りたい方や不動産の取引の流れを知りたい方も一読しておくといいですね。
まとめ
不動産広告は、特に厳しい公正競争規約を守る必要があることをご理解いただけたでしょうか。その規制の対象は、インターネット上を含む物件広告、チラシ、ポスター、パンフレットなどすべてになります。ルールを破ることは、法律で罰せられるとともに、お客さまの信頼を失うことになります。よりお客様にわかりやすく、正確な情報を載せられるようにしっかりとルールの改正点を理解しましょう。