デジタルサイネージは街中で見かけます。あなたも集客や情報提供、データを共有するなどの目的で、デジタルサイネージを利用したいと思うかもしれません。しかし、デジタルサイネージは、誰がどこにでも設置しても問題はないのでしょうか?答えはノー!です。デジタルサイネージを含む屋外看板は、法令を守って設置する必要があります。法令に反すると広告物の差し止めや罰金などの罰則があるので「知らなかった!」では済みません。
この記事では、デジタルサイネージを設置する際に注意すべき法令と条件規制をまとめてご紹介します。
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デジタルサイネージの設置に関連する法令・条例規制
デジタルサイネージを設置する際には、条件によりいくつかの法令、条例を確認しておく必要があります。基本的に関連するものをご紹介します。
1. 屋外広告物法
デジタルサイネージを含む屋外看板は、「屋外広告物法」という法律で規制されています。この法律は1949年に制定されて以来、4回にわたる改正により年々強化されています。その主な目的は「美しい街の景観を維持」や高所に設置された看板の落下による「公害を予防」するためです。1949年の日本は戦後で経済や政治の自立を図ろうとしている時代であったため、看板が無秩序に増設されていました。この状況を放置すれば、事故につながったり、街の景観を損なうという懸念から法令が制定されました。
それでは、屋外広告物法の内容を詳しくみていきましょう。
1⃣屋外広告法の目的
屋外広告物法の目的は「良好な景観の形成・風致の維持」と「公衆に対する危害の防止」の二つになります。
第一条に以下のように定められています。
第一条 この法律は、良好な景観を形成し、若しくは風致を維持し、又は公衆に対する危害を防止するために、屋外広告物の表示及び屋外広告物を掲出する物件の設置並びにこれらの維持並びに屋外広告業について、必要な規制の基準を定めることを目的とする。
引用:屋外広告物法1条 – e-gov法令検索
第二条には以下のように定められています。
第二条 この法律において「屋外広告物」とは、常時又は一定の期間継続して屋外で公衆に表示されるものであつて、看板、立看板、はり紙及びはり札並びに広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されたもの並びにこれらに類するものをいう。
2 この法律において「屋外広告業」とは、屋外広告物(以下「広告物」という。)の表示又は広告物を掲出する物件(以下「掲出物件」という。)の設置を行う営業をいう。
引用:屋外広告物法2条 – e-gov法令検索
2⃣ 屋外広告物の定義
では、屋外広告物とは何を指すのでしょうか。
条文によると
- いつ:常時または一定の期間継続して
- どこで:屋外
- どのように:公衆に表示
- 何を:看板、立看板、張り紙、張り札、広告塔。広告板、建物その他の工作物等に掲出・表示されたもの、またはこれに類するもの
となっています。これは、目的、内容に関係なく屋外広告物法の規制の対象となります。営利目的ではなくても、罰則を受けることがあり注意が必要です。
2. 屋外広告物条例
デジタルサイネージを規制するものは、法令の他に設置する都道府県による条例を確認する必要があります。これは、各都道府県や政令市、中核市が定める法規制です。
東京都屋外広告物条例の一例を挙げてみます。
禁止区域
- 田園住宅地域
- 特別緑地保全地域
- 景観地区のうち知事が指定する区域
- 学校、病院、公会堂、図書館、博物館、美術館、官公署等の敷地 他
禁止物件
- 橋、高架道路、高架鉄道及び軌道
- 道路標識、信号機、ガードレール、街路樹
- 郵便ポスト、公衆電話ボックス、送電塔、テレビ塔、照明塔、ガスタンク、水道タンク、煙突、無線塔、吸排気塔、形像、記念碑
- 電柱、街路灯柱、消火栓標識 他
以上の箇所でも許可を受ければ出せる場所、広告物もあります。詳細は、該当地域の条例をご確認ください。
3. コンテンツに関する法規制
デジタルサイネージで配信するキャラクターや楽曲などの著作権、肖像権、商標権など各種の権利の尊重と使用権の取得が必要です。また、デジタルサイネージならではの注意点は、公衆送信権にあります。ネットワーク型のデジタルサイネージは、配信方式によって公衆送信権の法的規制が適用されることがあります。
公衆送信権とは、インターネットなどで著作物を公衆向けに「送信」することに関する権利です。公衆向けであれば、無線・有線を問わずすべてが対象となります。デジタルサイネージにおいては、コンテンツを配信する方法により関わる法規則が異なるので注意が必要です。
スタンドアロン型とネットワーク型の違い
- スタンドアロン型は、デジタルサイネージ自体にコンテンツのデータを内臓して配信します。関連法は、複製権・上映権・著作権などの財産権です。
- ネットワーク型は、インターネットを通じて遠隔操作で複数に一斉配信などが可能です。配信に関連する法は、公衆送信権・放送権・商業レコードの二次使用、著作者の財産権です。
4. 景観法
直近の改正は2004年になりますが、これは前年に制定された「景観法」の影響があるようです。景観法の目的は、都市、農山漁村などの良好な景観を促進するためです。景観法のわかりやすい例を挙げるとしたら、京都の街並みでしょう。歴史と伝統、日本文化を重視した街づくりが定められている京都は、コンビニエンスストアやマクドナルドなど、おなじみの全国チェーン店であっても看板の色が茶色に統一されています。名古屋市を例に挙げると、建物の建設や屋外広告に高さや外装デザインの規制が定められています。これは、名古屋城の天守閣から1km~1.5kmの範囲を「名古屋城眺望景観保全エリア」として指定しているためです。
5. 道路交通法と道路法
デジタルサイネージを含む屋外看板は、道路の路地に直接置くと違反となります。道路交通の安全や保全のために、道路交通法と道路法で以下のように定められています。
- 道路交通法第1条
「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資すること」 - 道路法第1条
「路網の整備を図るため、道路に関して、路線の指定及び認定、管理、構造、保全、費用の負担区分等に関する事項を定め、もって交通の発達に寄与し、公共の福祉を増進」
6. 建築基準法
最近は巨大なデジタルサイネージも増えてきました。そこで、気になるのが、建築基準法です。4mを超える大きなものは、建築基準法が適用されます。
デジタルサイネージを導入する際に法的違反を犯さないためのポイント
デジタルサイネージを設置する際に法令違反を犯さないために、心掛ける点を改めてまとめましょう。
1⃣コンテンツの著作権と肖像権の遵守
コンテンツ作成の際に、必ずキャラクターや楽曲の著作権者から許可を得る、使用料を払うなどの権利処理を行うことが大事です。または、パブリックドメイン(公有)の著作権や肖像権が発生しないコンテンツを利用しましょう。肖像権に関しては、著名人だけでなく一般人にも適用されます。撮影した動画や静止画に店舗や人物が写りこんでしまっていないか、コンテンツ作成、利用の際は慎重な取り扱いが必要となります。
2⃣設置場所の選定
デジタルサイネージの設置できる場所は制限されています。公共施設や歴史的建造物の近く、交通安全上の問題がある場所には設置できません。他には、景観を守るためなどの理由で、各都道府県ごとに詳細な規則が設けられています。
3⃣ 公衆送信権の確認
ネットワーク型のデジタルサイネージにおいては、公衆送信権の法規制が適用されます。
屋外広告物法・屋外看板に関する条例に違反した場合
屋外広告物法に違反した場合、どうなるのでしょうか。意図的ではないにしても、1年以上の懲役又は50万円以下の罰金などが課せられることがあります。各都道府県の条例や違反の程度により罰則金も異なります。しかし、いきなり罰則が課せられることは少なく、まずは改善命令の文書や電話指導があるようです。これらに対応しなければ、罰せられるという流れです。
まとめ
デジタルサイネージに関する法令は、意外と多いと感じたのではないでしょうか。コンプライアンスを重視する流れの中で、デジタルサイネージで配信するコンテンツの内容や方法にも注目が集まっています。効果的な情報配信ができるデジタルサイネージだからこそ、上手く活用したいところです。デジタルサイネージに最も関連する法である屋外広告物法をしっかりと確認することが大事です。 小さなシールであっても勝手に貼ると法令違反となることがありますので、注意してください。公的、私的に関わらず、法令や条例、コンプライアンスをしっかりと守ってデジタルサイネージを設置してください。