主物に附属せしめられた物のことを「従物」とする、という考え方は民法第87条第1項に基いています。従物はそれ自体では独立した存在ですが、主物と一体となることで存在意義があるとされます。
例えば、主物を建物とした場合、建物に取り付けられたエアコンや畳・建具、また宅地に対する石灯籠・取り外し可能な庭石などが従物となります。いってみれば、転居する際に、テレビや洗濯機、冷蔵庫、テーブルなどは転居先でも利用可能ですが、障子、襖、ドアといった建具、畳、風呂桶、セントラルヒーティングなどの機器、据付け式の家具などは転居先では利用できません。このように建物を主物とすると、これら転居先で利用できないものが従物になります。判断が微妙となるのは後付けのエアコンや照明器具です。中古住宅の売買の内見などの場合には、こうした付帯設備の扱いについて確認し、必要ならば契約書に後のトラブルを防ぐために明記することをおすすめします。
さらに従物については、下記の点がよく問題となります。
1.主物の売買
従物は「主物の処分にしたがう」(民法第87条第2項)とされているので、通常は、主物を売買すれば、当然に従物も売買されることになります。ただし、売買の当事者がこれと異なる合意をすれば、従物と主物を切り離して売買することは可能です。
2.主物の登記
主物が登記されれば、その登記により主物と従物の両方の物権変動が公示されたことになります。よって、建物が登記されれば、附属建物である物置が未登記であっても、登記の対抗力は附属建物である物置に及ぶとされます。
3.抵当権の設定
抵当権を設定した当時において、すでに主物に附属していた従物には、抵当権の効力が及ひます。しかし抵当権設定後に附属していた従物については解釈が分かれています。
(詳しくは付加一体物へ)
4.従たる権利
民法第87条第2項の「従物は主物の処分にしたがう」という内容は、物と権利との関係にも同様として適用されています。例えば、借地上の建物が売買される場合には、その建物とともに借地権も売買されるという内容です。このように、主物に附属せしめられた権利を「従たる権利」といいます。