建設住宅性能評価書が交付された住宅について、建設工事の請負契約または売買契約に関する紛争が生じることがあります。
その際、紛争の当事者の双方または一方からの申請により、紛争のあっせん・調停・仲裁を行なう機関を「指定住宅紛争処理機関」といいます(住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)第63条)。
各都道府県の弁護士会または民法上の社団法人・財団法人のみが指定住宅紛争処理機関になることができます(同法第62条)。
指定住宅紛争処理機関を利用する際のポイントとしては次の点があげられます。
1.建設住宅性能評価書が交付されている住宅である必要がある。
以下に該当する住宅は、指定住宅紛争処理機関による紛争処理を申請することができません。
●住宅性能評価書が交付されていない
●設計住宅性能評価書のみが交付されている
※住宅性能評価書には設計住宅性能評価書・建設住宅性能評価書の2種類があります。
2.紛争処理を申請時の費用は原則1万円。
紛争処理を申請する際の手数料は1万円とされています(住宅品質確保法69条および同法施行規則第104・105条)。
ただし、鑑定等に要する費用を紛争の当事者が別途負担するように指定住宅紛争処理機関が定めることも可能とされています。
3.紛争処理の対象は、評価書に記載された事項に限らない。
指定住宅紛争処理機関が取り扱う紛争の範囲は、建設住宅性能評価書に記載された事項に限りません。
例えば、以下のようなケースは申請が可能です。
●住宅の欠陥を原因として居住者に健康被害が発生したような場合
その住宅の欠陥の物的損害だけでなく、健康被害による損害についてもあっせん・調停・仲裁の申請が可能です。
●共同住宅の建設住宅性能評価書において、重量床衝撃音などの「音環境に関すること」を検査しておらず、音環境の評価結果がない場合
上階からの衝撃音・騒音が生活に支障をきたすような場合、その住宅の欠陥に対するあっせん・調停・仲裁の申請が可能です。
4.民事裁判への移行も可能。
あっせん・調停には和解契約としての効力が発生し、仲裁には民事訴訟の確定判決と同じ効力が発生するとされています。
そもそも紛争当事者の双方の合意があるときに限りなければ、あっせん・調停・仲裁を行なうことはできす。
従って、紛争当事者の双方が合意に至らない場合には、紛争当事者は通常どおりの民事訴訟を提起することができます。
また、指定住宅紛争処理機関による紛争処理を申請せずに、初めから民事訴訟を提起することも当然可能です。