売買契約において売主が負う無過失責任(民法第563条)
売主に帰責事由(故意過失、過失)がある場合のみに買主は売主の債務不履行責任を追及できる。
しかし、これだけでは買主の保護に欠けるため契約において信頼が損なわれかねない。そのため民法では、「売主の担保責任」がある。これは売主が無過失であった場合においても一定の責任を負うという定めである。
例えば、借地権付の建物など、権利の一部が他人に属する土地1000万円、建物を2000万円で購入したとする。
だが、買主は契約後に借地権付の事実に気がついた。借地権があると事前に知っていれば購入はしなかった可能性が高くある。この土地の借地権の相場が700万円だったとするなら、この物件自体の価値は2700万円であるため、買主は300万円過払いだったということにもなる。
このようなときのために民法では売主の「無過失責任」を認めている。
権利の一部が他人に属することを知らなかった「善意」の買主は、例え売主が「無過失」であろうとも損害賠償や代金減額請求、契約解除ができ、売主はこれを拒否することはできない。
権利の一部が他人に属することを知っていた「悪意」の買主の場合には、代金減額請求は可能でも契約解除や損害賠償請求はできない。しかし売主に故意過失があれば債務不履行責任を追及できる。