「瑕疵担保責任」とは、売買契約や請負契約で、後日契約の対象となった物に瑕疵(欠陥)があることが判明した場合の、売主や請負人が負うべき損害賠償等の責任を定めたものです。
瑕疵担保責任は、請負契約については民法第638条等で規定されてはいますが、これははあくまでも任意規定であるので、住宅の建築請負契約の実務では、請負人が瑕疵担保責任を負う期間を通例2年とするなどの短い期間で設定されています。このように請負人の瑕疵担保責任が事実上非常に限定されていることが、欠陥住宅問題の発生原因の一つであると指摘されています。
こうした状況を改善するため、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)第87条では「住宅を新築する建設工事の請負契約においては、請負人は、注文者に住宅を引き渡した時から10年間にわたって、構造耐力上主要な部分等に関する瑕疵担保責任を必ず負う」と規定しました。ただ、この規定の対象となるのは新築住宅工事のみで、構造耐力上主要な部分と雨水の侵入を防止する部分に限られています。さらに、引渡し後10年以上経過したものや、欠陥に起因する雨漏りの発生など建築物が壊れてから1年以上経ったものについては請負人への瑕疵担保責任の追及はできなくなるので注意が必要です。尚、瑕疵担保責任の追及方法は2通りあり、ひとつは瑕疵補修請求と、もうひとつは損害賠償請求になります。注文者は補修工事のみ、賠償請求のみ、補修工事と賠償請求の組み合わせの3つの方法で請求することができます。
このように、住宅の主要部分について請負人が10年間にわたり瑕疵担保責任を負うことを義務付けることによって、住宅の注文者を強く保護することを目的としています。
尚、「品確法における請負人の瑕疵担保責任」の具体的な内容は下記のとおりです。
1.適用対象は新築住宅工事に限られます。
品確法では、請負人が10年間にわたり瑕疵担保責任を負うことが義務付けられていますが、この対象となるのは「住宅を新築する工事」のみです。
従って、住宅の増築工事やリフォーム工事については、たとえその工事により住宅に欠陥が発生したとしても、品確法第87条は適用されないため、この場合は民法第638条等に基づき請負人の責任を追及するしかありません(詳しくは瑕疵担保責任へ)。
2.適用対象は「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」に限られます。
「構造耐力上主要な部分」や「雨水の浸入を防止する部分」に該当しない部分である住宅の内装などについて欠陥が判明したとしても、品確法第87条は適用外となります。この場合は民法第638条等に基づき請負人の責任を追及することになります。
3.引渡し後10年が経過している場合は、瑕疵担保責任は追及できません。
請負人に対して瑕疵担保責任を追及することができる期間は、引渡しから10年間に限られています。例えば木造住宅の外壁に欠陥があり、その欠陥が引渡しから11年後に発見されたとしても、品確法第87条は適用されません。
4.権利行使期間が終了すると、瑕疵担保責任を追及できなくなります。
瑕疵担保責任を追及するためには、建築物が壊れたときから1年以内に、請負人に対して瑕疵担保責任を追及しなければなりません。この1年の期間を「権利行使期間」といいます。(住宅品質確保法第87条、民法第638条第2項)。
例えば、木造住宅の引渡しから3年経過した時点で、欠陥に起因する雨漏りが発生したとします。このとき注文者は3年経過した時点で建築物が壊れたのだから、雨漏りの発生から1年以内に、請負人に対して欠陥の補修(または損害の賠償)を要求しなければなりません。雨漏りの発生から1年が過ぎたのちに請負人に対して欠陥の補修(または損害の賠償)を初めて要求した場合は、請負人は瑕疵担保責任を負う義務はありません。
5.瑕疵担保責任の追及の方法は「瑕疵修補請求」と「損害賠償請求」の2通りがあります。
瑕疵担保責任を追及する方法としては、注文者は請負人に対して、住宅の欠陥の補修工事を要求することができますがこれを「瑕疵修補請求」といいます。
また判例(昭和54年3月20日最高裁判決)によれば、注文者は請負人に対して、住宅の欠陥の補修工事が可能な場合であっても、補修工事を要求することなく、その欠陥から生じた損害を金銭で賠償するように要求することができ、これを「損害賠償請求」といいます。
従って、注文者は自らの判断で、補修工事と金銭賠償のどちらでも要求することが可能です。また、補修工事と金銭賠償を組み合わせて要求することもできます。